企業の目的の定義は1つしかない。それは、顧客を創造することである。

解説

「企業とは何か?」。それを決めるのは、顧客である。なぜなら、顧客だけが製品やサービスに対してお金を支払う意志を持ち、製品やサービスを財貨に変えるからだ。
しかも、顧客が価値を認め購入するものは、製品やサービスそのものではない。製品やサービスが提供するもの、すなわち効用である。
この顧客を創造することこそが、企業の目的である。従って、企業は2つの基本的な機能を持つ。それが、「マーケティング」と「イノベーション」である。
第1の機能であるマーケティングをきちんと行う企業は少ない。多くの企業が行っているマーケティングは、販売に関係する全職能の遂行を意味するに過ぎない。それはマーケティングではなく、販売である。
これに対し、真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち、「我々は何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「我々の製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。
実のところ、販売とマーケティングは逆である。
マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すのは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。
そして、第2の機能であるイノベーションとは、新しい満足を生み出すことである。
単に製品とサービスを供給するだけでなく、より良く、より経済的な製品とサービスを供給しなければならない。
イノベーションの結果もたらされるものは、より良い製品、より多くの便利さ、より大きな欲求の満足である。

編集部のコメント

 ビジネス界にもっとも影響力をもつ思想家として知られる、P・F・ドラッカー(1909~2005)。彼は「目標管理」や「顧客第一」といったマネジメントの理念と手法を数多く考案し、その発展に寄与してきました。
 今回紹介した名言が収録されている『マネジメント【エッセンシャル版】 基本と原則』は、ドラッカーの代表作である大著『マネジメント――課題・責任・実践』から、もっとも重要な部分を選り抜いた、ビジネス書の古典的名著です。

 なお、『マネジメント――課題・責任・実践』(以下、『マネジメント』)の原本は、この本と同じくダイヤモンド社より全3巻(上中下・ドラッカー名著集13~15)で刊行されています。また、日経BPでも「日経BPクラシックス」のシリーズとして、『マネジメント――務め、責任、実践』のタイトルで全4巻(Ⅰ~Ⅳ)として刊行されています(TOPPOINTライブラリーでは、このⅠ巻の要約をご覧いただけます)。

 『マネジメント』は、1950、60年代のドラッカーの経験から生まれました。その時代は1つの転換期であり、20世紀の欧米や日本の「経済、社会、企業、マネジメントが形成された」時代でした。
 ドラッカーはこの時代に、マネジメントには基本と原則があり、それに反するものは例外なく破綻する、ということを学びました。ところが当時、成功している経営者でさえ、マネジメントの基本と原則を十分に把握していないことに、彼は気づきました。そこで、「マネジメントの 課題と責任と実践に関わる基本と原則を総合的に明らかに」することを試みます。そうして書かれたのが、『マネジメント』です。

 マネジメントの使命、役割とは何か。マネジャーはどのような役割を果たすべきか。そして、中長期的な視点で戦略をどう考えるべきか ―― 。およそマネジメントにかかわるすべてのことについて解説した、この『マネジメント』のエッセンスを、エッセンシャル版は余すところなく収めています。ドラッカーのマネジメント論の“精髄”が、この1冊に凝縮されているといってもいいでしょう。

 この本は、経営者から社会人1年生にいたるまで、マネジメントに関わる、または関心をもつあらゆる人たちに向けてまとめられています。組織で働く人たちに、自らの役割や責任を全うするための指針を与えてくれる本として、一読をおすすめします。

2002年3月号掲載

マネジメント【エッセンシャル版】 ――基本と原則――

ドラッカー経営学の集大成、『マネジメント』から重要な部分を抜粋して紹介する。「マネジメントには基本とすべきもの、原則とすべきものがある」「基本と原則に反するものは、例外なく時を経ず破綻する」。こう語る著者が、マネジメントの課題と責任と実践に関わる基本と原則を、総合的に解説。時代を超えて踏まえるべきマネジメントの要諦が示される。

著 者:P・F・ドラッカー、上田惇生(編訳) 出版社:ダイヤモンド社 発行日:2001年12月
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