人間は、基本的生活にかかわる欲求を満たすと、あるいはそれ以前の段階であっても、激しい欲望をもつようになる。だが、何が欲しいのかは自分でもわからない。なぜなら、人間は欲しがる存在だからだ。
 人間は、自分にはないと感じる、自分以外の誰かがもっているはずのものを欲しがる存在なのだ……。

―― ルネ・ジラール

 

解説

 現代社会は、昔に比べて十分豊かになった。にもかかわらず、我々は物質的な繁栄をこれまで以上に追求している。
 人間の欲望には驚くべき順応性がある。文芸批評家ルネ・ジラールが述べるように、人間は自分以外の誰かがもっているはずのものを欲しがる。その欲望には際限がなく、すべての富を消費しようとするのだ。
 経済成長は目的をもたらす手段ではなく、むしろ生活の苦悩から人間を救い出す宗教のような役割を果たす。事実、数億人もの人々が経済成長という神を崇め、その結果、地球上の生命や環境が危険にさらされている。

編集部のコメント

 人は、無限の欲望という「呪い」から逃れられないのか?
 『経済成長という呪い 欲望と進歩の人類史』は、富の追求をやめない現代資本主義に警鐘を鳴らした本です。

 著者は、フランスを代表する経済学者であり、思想家のダニエル・コーエン氏(1953-2023)。ジャック・アタリやトマ・ピケティと並ぶ「欧州最強の知性」ともいわれています。コーエン氏は、ピケティらとパリ経済学校を設立した他、エリート校であるパリ高等師範学校の経済学部長、パリ経済学校教授、『ル・モンド』論説委員などを歴任しました。著書は多数あり、邦訳書には『経済は、人類を幸せにできるのか?』(作品社)、『迷走する資本主義』(新泉社)などがあります。

 コーエン氏によれば、産業革命以後、人々は物質的な豊かさを求め、経済成長を信奉するようになりました。この富を追求する欲望は、地球環境の危機が叫ばれる現在まで続いており、やむことはありません。なぜ、現代人が富を無限に増加させることに執着するのか ―― 。
 この問いに対して、氏は人類の歴史を振り返り、「文明化の過程」を検証するという壮大なアプローチをとることで、その謎に迫っています。それとともに、現代社会が経済成長なしでも持続することができるのか、その可能性についても考察を行います。

 『経済成長という呪い 欲望と進歩の人類史』は、これからの世界における経済や社会制度のあり方について、私たちに再考を促す1冊です。

2020年1月号掲載

経済成長という呪い 欲望と進歩の人類史

産業革命後、人々は物質的な豊かさを求め、経済成長を信奉するようになった。地球環境の危機が叫ばれる今も、富の追求がやむことはない。人は、無限の欲望という“呪い”から逃れられないのだろうか? フランスを代表する経済学者・思想家が、経済成長と人間の欲望を読み解く。現代資本主義に対する警鐘と提言の書。

著 者:ダニエル・コーエン 出版社:東洋経済新報社 発行日:2017年9月
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