2026年4月号掲載

ダーウィンの罠 私たちはなぜ重要な選択を間違い続けるのか?

Original Title :THE DARWINIAN TRAP:The Hidden Evolutionary Forces That Explain Our World (and Threaten Our Future) (2024年刊)

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著者紹介

概要

人間は、利己的な生き物である。短期的な利益に目がくらみ、社会全体の幸福を損なったりする。なぜか? その謎を解くカギは、かのダーウィンが世に問うた「自然選択」にある。この理論を切り口に、地球温暖化から核戦争、AIの開発競争まで、人類を脅かす近視眼的な行動 ―― 「ダーウィンの悪魔」について考察する。

要約

ダーウィンの悪魔

 ベトナムがフランス領だった時代の話だ。

 当時のハノイではネズミの多さが問題になっていた。そこで1902年、フランス植民地政府はその一掃計画を実施する。住民にネズミを駆除してもらい、その尻尾が持ち込まれれば本数に応じて対価を支払うことにしたのだ。

 報奨金が得られるとなれば、大々的にネズミの駆除に取り組む者も現れるだろう、それでネズミ問題はすぐに解決する、と政府は考えた。だが、実際に起きたことは予想とは全く違っていた。

 ネズミがいなくなると報奨金はなくなってしまう。そこでハノイの人々は、ネズミを捕まえても殺さず、尻尾だけ切り取って解放したのだ。

 しばらく経つと、ネズミの数は減るどころか、かえって増えた。植民地政府は困惑し、結局、数カ月間で計画は中止になった。

「ハノイのネズミ一掃計画」はなぜ失敗したか

 ハノイのネズミ一掃計画は、経済学の「倒錯したインセンティブ」(意図せず元の問題を悪化させるようなインセンティブ)の典型例だ。

 倒錯したインセンティブがあると人々は、他の全員の状況が悪化するとしても、自分の利益のために制度の抜け穴を利用するよう促される。

 ただ、集団や社会全体の幸福を犠牲にしても自らの短期的な利益を追求する利己的な衝動は、人間だけのものではない。それは地球に生物が現れた時から一貫して存在する衝動だ。

「適者生存」が自然選択の基本

 著書『種の起源』でチャールズ・ダーウィンは包括的な進化の理論を打ち立て、「自然選択」を自身の考えを表す言葉として使い始めた。ダーウィンの理論を簡単にまとめるとこうなる。

 生物には、たとえ同じ種でも個体ごとに様々な違いがある。例えば、同じ人間でも背の低い人もいれば高い人もいる。しかし、もし捕食者が6フィート(約183cm)以上の人間を襲わないとしたらどうか。その場合は背の高い人が多く生き残る。多く生き残れば、その分、多くの子孫を残し、背が高いという形質を次世代に伝えるだろう。

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