2026年11月号掲載

自分のための 寛容学

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著者紹介

概要

ネット上で絶えず誹謗中傷が飛び交う現代。社会に「不寛容」が広がる中、どうすれば「寛容」でいられるのか。そのヒントは「帝王学」にある。こう述べる哲学研究者が、古代ローマの哲人セネカの言葉を紐解きながら、寛容になるための道筋を示す。他者だけでなく自分自身にも恵みをもたらす、「寛容の技術」を学べる1冊。

要約

寛容とは何か

 「不寛容さの嵐が吹き荒れている」

 そんなふうに今の時代が表現されることがある。ネット上では外国人や弱者といわれる人々への誹謗や中傷が止むことはないし、企業などで問題が発覚したら抗議の電話やメールが殺到する。

 また年齢を重ねるほど、日常生活や社会、政治に関して「許せない」と思うことが増えていく。人はそもそもデフォルトとして「不寛容」なのか、「寛容」なのか。難しい問題だが、今の時代が不寛容さを増長するところがあるのは確かだ。

「奪われている」感覚になりやすい時代

 「ギブ&テイク」という言葉がある。日本語では「持ちつ持たれつ」という。これだけを聞けば、いいことのように思える。相互の助け合いが表現されているからだ。

 ただし、もしあなたの中に「奪われている」感覚があれば、自分は与えるばかりで、与えられることが少ないと感じている可能性がある。実は、現代はこうした感覚を醸成しやすい。なぜか?

ギブよりゲット

 ここに興味深いデータがある。1800~2000年のアメリカの人口統計だ。それを見ると、19世紀半ばから人々が徐々に都市で暮らすようになったことがわかる。そして1920年代頃には「田舎」と「都市」の人口が逆転し、その後も都市はどんどん人口を増やしていく。

 次に、上記の時代の書籍の中に現れる「ギブ(与える)」と「ゲット(得る)」の2つの単語について見ると、ギブの出現頻度が徐々に下がり、1920年を越えた辺りからゲットが逆転する。しかも20世紀終盤から急激にゲットが伸びている。

 都市は田舎とは異なり、人に積極的に関わらなくても個人として生きていける。そうなると人は、誰かにギブすることより、自分のためにゲットすることを優先するようになるのではないか。

ゲット&ゲットの時代

 前述のことから、現代を生きる私たちは常に何かをゲットするように社会の方から煽られ、誘導されていると推測できる。実際、欧州の言語や日本語、中国語などでも同様の結果が得られた。

 時代はギブ&テイクではなく、「ゲット&ゲット」になっている。とにかく何でも多くをゲットするのがいいとされる社会だ。これを裏返せば、ゲットの機会を失うことは重大な損失だという呪いがかけられているといえるかもしれない。

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