2026年11月号掲載
アート経営 ありたい未来を描き、創り上げる
著者紹介
概要
アートと経営。両者を合体したものが「アート経営」だ。これは、今静かなブームを呼んでいる「アート思考」とは異なる。著者は言う。真のイノベーションに求められるのは思考ではなく、試行、すなわち「実践」だと。本書では、アート思考の問題点を指摘した上で、アートを経営に正しく落とし込むためのポイントを説く。
要約
アート経営とは
「アート経営」。それは、アートと経営を合体させることである。
では、そもそもアートとは何か? 本書では、「心技体を駆使して崇高な美的価値(感動)を生成する活動や作品」と定義する。
経営も、そのような創造的な活動として捉え直すことができる。そして、その活動から生み出されるアウトプット、さらには企業体そのものもアート作品として見なすことができるはずである。
アートの3つの源流
アートの語源は、ギリシャ語の「テクネー」。今の「テクノロジー」の語源でもある。テクネーのラテン語訳が「ars(アルス)」。人の手で作られるもの、行われるもの全般を指す。従って、アートは本来、技術や技芸を意味していた。
18世紀後半、産業革命によって技術が大きく進展するに従い、アートの意味が変貌する。実用性を担う技術をテクノロジー、純粋に美を扱うものをアートと呼ぶようになった。
実はアートには、もう1つの流れがある。古代ギリシャでは職人や奴隷に対する教育を前述のテクネーと呼び、自由市民に対する教育を「パイデイア」と呼んだ。
その伝統を参考に、ローマの思想家キケロが「アルテスリベラレス」という教育体系を提唱した。それが今の「リベラルアーツ」の語源だ。彼はその中身を、文法学、修辞学、論理学、代数学、幾何学、天文学、音楽の「自由七科」に分類。これらが当時の自由人に必要な学問とされた。
「アート経営」にとっての3つの意味合い
アートがこのような変遷をたどってきたことは、アート経営にとって3つの意味合いがある。
①純粋芸術(ファインアート)としてのアート
今日、アートという言葉で想起されやすいこの概念は、300年前に生まれたものにすぎない。アートを純粋な美の追求として捉える限り、実用性を重視する企業経営にとっては、関係性が希薄なものだと思われがちだ。
だが、価値観が多様化する中で、実用性を追求するだけでは顧客や社員を感動、共感させられない。アートが志向するような内発的な価値の創造こそが、次世代の経営に求められる。それが、狭義のアート経営が目指す姿だと言えるだろう。