2026年10月号掲載
多様性バカ 矛盾と偽善が蔓延する日本への警告
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年9月1日
- 定価968円
- ページ数191ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
「多様な立場の人に配慮しろ」と主張しながら、他者を批判・否定する ―― 。上っ面の多様性を口にする、いわば「多様性バカ」が、SNSなどで跋扈している。何がこうした状況をもたらしているのか? テレビ、新聞などでおなじみの生物学者が、その原因を明らかにする。そして、理想的な多様性社会に必要なルールを説く。
要約
「多様性疲れ」という現象
日本人は、電車が到着するまできちんと並び、先に乗った人から椅子に座る。それが日本人の基底をなす「コモンセンス」、つまり日本人ならほとんどの人が知っている共通認識だからだ。
一方、今の日本では電車で高齢者に席を譲ることが当たり前になっているとは言い難い。だから優先席を設け、高齢者には席を譲りましょうと書かれている。明文化したルールにすることで、高齢者に席を譲ることを促しているわけだ。
必要なルールを作ること自体は間違っていない。ところが厄介なのは、ひとたびルールができると、それを守ること自体が目的になってしまうことだ。
つまり、「高齢者という弱者を守る」ために作られたルールが「優先席には弱者以外が座ってはいけない」とすり替わり、他に席が空いていても「優先席」に若者が座っているだけで怒る人が出てくる、といったことが起こりかねないのだ。
目的と手段がひっくり返る
このように目的と手段がひっくり返るのは人間が陥りがちな思考の癖によるものだが、「多様性」を取り巻く現状もこのフェーズに陥っている。
日本は、単一民族からなる島国ということもあり、「多様性を尊重する」ことがコモンセンスとして浸透しているとは言い難い。だから、「多様性を尊重する社会」を実現するには、優先席を設けるのと同じような明文化されたルール、つまり「多様性の尊重」に関わる「コンプライアンス遵守」という手段が必要なのかもしれない。
ところが、「多様性の尊重」という目的と「コンプライアンス遵守」という手段がひっくり返ると、ガラガラの車内で「若者が優先席に座っているのはけしからん」などと言い立てるのと似たようなことが起こる。おそらくそれが、「多様性疲れ」という現象を生み出している元凶だろう。
「多様性の尊重」のためのルールは、増やせば目的が果たされるわけではない。場合によってはただの「多様性バカ」ばかりが増えていくという結果になりかねない。
「多様性」とは何か?
そもそも「多様性」とは何なのか?
政治を動かすためのコトバだった「生物多様性」
「多様な生物が存在すること」の意義やその重要性などについて一般に議論され始めたのは、実はつい最近である。