2026年10月号掲載
病は言葉から 脳はなぜ情報を「毒」に変えてしまうのか?
Original Title :THE NOCEBO EFFECT (2024年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2026年8月12日
- 定価2,970円
- ページ数281ページ
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概要
注射される時、医師が「痛いですよ」と言うと余計に痛くなる。薬の副作用は「事前に説明」されると出やすくなる ―― 。これらは「ノセボ効果」と呼ばれる。医師やメディアなどが発する否定的な情報が引き金となり、実際に具合が悪くなる現象だ。本書は、医学の世界的権威らがこの不思議な現象について論じた初の一般書である。
要約
診察室における言葉の影響力
薬効がない偽薬(プラセボ)を飲んだ時に、痛みや気持ちが和らぐといった望ましい結果が生じることをプラセボ効果という。それに対し、偽薬を飲んだ時に頭痛や腹痛といった望ましくない結果が生じることを「ノセボ効果」という。
ノセボ(nocebo)はラテン語で「害する」という意味のnocereに由来する。ノセボ効果の本質は、意識する・しないにかかわらず、否定的なことを予期した結果として体に悪影響が出ることだ。
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ノセボ効果は、医師の暗示的な言葉や振る舞いから生じることもあれば、患者自身の否定的な予期から生じることもある。否定的な予期は、症状に治療が効くのかどうかに関する場合もあるが、副作用や副反応に関する場合もある。
副作用について知っていると、どうなるか?
インペリアル・カレッジ・ロンドンのアジェイ・グプタ博士らは、ノセボ効果による副作用の研究で、スタチン系薬の効果を調べる臨床研究に参加した患者を追跡調査した。
スタチン系薬は血中のコレステロール値を下げる薬で、脳卒中などの心血管疾患を防ぐ。だが、筋肉の痛みや痙攣といった副作用がある。副作用のうち、どの程度がノセボ効果によるのかを調べるため、グプタは2段階に分けた調査を行った。
第1段階では、患者は自分がスタチン系薬を服用しているのかどうかを知らなかった。一方、第2段階では、患者は自分がスタチン系薬を服用していることを知っていた。すると、第2段階では筋肉に症状が出たという訴えが30%増加した。この違いは、スタチン系薬を服用していると患者が知っていたことのみから生じたのだ。
では、なぜノセボ効果による副作用を気にしないといけないのか? それは治療を中止する一番の理由が副作用だからだ。調査ではスタチン系薬の服用をやめた人のうち、副作用が理由の人が最大で78%。その多くがノセボ効果を経験していた。つまり患者たちは、薬自体のせいではなく否定的な予期のせいで服薬をやめたということだ。
この、服薬をやめるという決断に問題がないわけではない。スタチン系薬を服用しないとコレステロール値が高いままになり、心臓発作が起こるかもしれない。このことから、ノセボ効果がもたらす結果は深刻な事態に発展し得ることがわかる。
同じ効果の薬でも、効かないと感じる?
ベンデ・グリントボーグ博士らはデンマークで、バイオ医薬品からバイオ後続品に切り替えた1500人以上の炎症性関節炎患者を追跡調査した。
バイオ後続品は、バイオ医薬品の廉価版である。バイオ医薬品は高価で、特許で保護されているが、特許が切れたら他社が後続品を製造できる。価格は安いが、品質はバイオ医薬品と同等だ。