2026年10月号掲載
RETIRE SHIFT(リタイア・シフト) 人生100年時代の引退戦略
著者紹介
概要
これまで、リタイア(仕事の引退)の時期は会社が決めていた。だが近年、人手不足を背景に、主導権は会社から会社員に移りつつある。自分で辞め時を決められる「リタイア・シフト」の時代に、いつまで働くか。老後の備えはどう準備するのか。ベストな引退戦略を導くための心構えや選択のコツを、リタイアの専門家が説く。
要約
「リタイア・シフト」時代の到来
「リタイア・シフト」。それは、リタイア(仕事の引退)のタイミング、そしてリタイアを取り巻く環境自体が大きく変わる、社会の一大変革だ。
これまで会社員は、定年退職の時まで働き続け、就業規則に定められた退職年齢を迎えたら逆らう余地もなく退職していた。もし継続雇用制度があれば、否応なく65歳まで働く。なぜならそれまでは国の年金が満額もらえないからだ。
ところがこれからの時代、リタイアのタイミングを決める主導権は、会社から会社員の側に移ることになる ―― 。
人生100年時代に私たちはいつ、引退するのか
リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットは、著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で、100歳以上生きることが当たり前の「人生100年時代」の到来を示し、多くの人を驚かせた。この書は、長寿化はこれまでよりさらに長く働く時代を意味すると説明している。これは正しいと思う。
例えば、人生70年の時代に22歳まで学び、60歳まで働き、老後を10年送るとする。すると人生全体の54%が働く期間で、14%が老後である。
これを現在の男女合わせた平均寿命84歳の時代に適用すると、22歳まで学び、従来と同じく人生の54%を働くとしたら、勤続期間は46年。すると68歳だから、65歳リタイアの現状に近い。
これがもし、人生90年に延びたとしよう。学生として学ぶ期間は大きく変わらないとして、人生の54%が働く期間だから、勤続49年になり71歳でリタイアすることになる。
「高齢者は低賃金」は過去のもの
リタイア・シフトと聞くと、労働者の意思に関係なく引退年齢が遅くなるというイメージを持つ人もいるだろう。「長く働くといっても低賃金はイヤだなあ…」という感覚もあるかもしれない。
だが実は、リタイアを取り巻く社会の環境は大きく変わり始めている。
まず60歳以降の処遇の改善が進んでいく。今まで継続雇用で働くことは低賃金を意味したが、低賃金を助長する一因となっていた国の給付制度が見直され、そのような「当たり前」はなくなる。
定年年齢も引き上げが進む。65歳定年制の企業はすでに3割を超えている。その増加スピードは速く、10年を待たずして5割を超えるだろう。