2026年10月号掲載
なぜ「賢い人」が集まってしょうもない意思決定がなされるのか 身近な疑問からみる日本型組織の「無駄の構造」
- 著者
- 出版社
- 発行日2026年7月16日
- 定価1,980円
- ページ数316ページ
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著者紹介
概要
個々人は優秀なのに、集団になると愚かになる。誰もが失敗すると思っているプロジェクトが、全会一致で承認されるなど、日本企業は「集団浅慮」に陥りがちだ。その原因は、個人の資質や組織風土ではなく、組織の構造自体にある。そう述べる組織論の第一人者が、日本ならではの「共同体型組織」の悪弊を指摘、その解決策を示す。
要約
しょうもない意思決定がなされる原因
あなたの会社で、こんな光景を目にしたことはないだろうか?
役員も同席する重要会議。議題は巨額の投資を伴う新規プロジェクトだ。資料にはバラ色の未来予測と、右肩上がりの収益グラフが並んでいる。
あなたには、その計画が穴だらけなことが一目でわかる。数字には無理があり、このスケジュールでは破綻するのが目に見えている。
しかし隣に座る先輩は、部長が「異存ないね」と全体を見渡すと「前向きでよいプランだと思います」と答えた。結局、誰一人反対することなく「絶対に失敗するプロジェクト」が動き出した。
会議の後、先輩はポツリと漏らす。「あんなの無理だよな。でも、あの場で反対しても部長のメンツを潰すだけだし、適当にやって後で『想定外の事態が起きた』って報告するしかないよな」。
こうした光景は、どの職場でも見られる。個々人は優秀で、問題点も把握している。だが集団になると、「正しい判断」を放棄してしまうのだ。
「集団浅慮」を生む条件
社会心理学で、こうした現象は「集団浅慮」(group think)と呼ばれる。命名者のI・L・ジャニスは、ベトナム戦争など第二次世界大戦以来のアメリカの歴史的な出来事を取り上げ、当時の大統領と側近の誤った意思決定を分析している。多くの事例に共通しているのは次の点だ。
まずメンバーの「凝集性」が高い。元々、大統領と考え方が近い人が選ばれているうえ、同じメンバーで議論するうちに自然と人間関係も親密になる。そしてメンバーは、リーダーや仲間からの承認を失わないことに気を使う。その結果、リーダーの意向に逆らったりすることは極力避けようとする。
このように集団浅慮は、「正しい判断」よりも「承認を失わないこと」を優先した結果として生じる現象なのだ。
日本企業の組織の特徴
注目すべきは、集団浅慮を助長する条件が、日本の会社ではいっそう顕著に備わっていることだ。
日本企業の組織の特徴の1つとして、人の出入りが少ないことが挙げられる。まだ新卒一括採用が基本であり、一度入社すると社員は長期間、運命をともにする。この流動性の乏しさは、外部の新しい視点や価値観が入り込む余地をなくし、組織内の凝集性を高めてしまう。