2026年8月号掲載

「もしも」で命は救えるか? 因果推論入門

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著者紹介

概要

世の中にあふれる、もっともらしい健康情報。これらに惑わされず、本当に信頼できるエビデンスを見極めるカギとなるのが「因果推論」だ。「もしも~していたら」と、原因と結果のつながりを科学的に考えるアプローチで、医療をはじめ、日常生活の意思決定に役立つ。その基本的な考え方を、具体的な研究事例を交えて解説する。

要約

因果推論とは?

 「雨の日は腰が痛む。だから雨が腰痛の原因だ」

 このように、「原因」と「結果」を安易に結びつけてしまうことは誰にでもある。

 こうした因果の思い込みは、多くが「同じタイミングで起こったこと」を「原因と結果(因果)」だと勘違いしているにすぎない。腰痛は気圧の変化と関連があるかもしれないが、雨そのものが原因ではない。

 本当の因果関係は、「因果推論」という学問で見極めることができる。これは「原因と結果のつながりを正しく見抜くアプローチ」だ。

因果と相関の違い

 よく知られた例として、「アイスクリームの売上が増えると、溺水事故も増える」という統計データがある。この話だけを聞くと、まるでアイスクリームを食べることが溺水事故の原因のように見える。しかし実際には、その裏に「暑い夏」という共通の要因が潜んでいるだけなのだ。

 つまり、同じタイミングで起きている出来事(相関)があっても、それが原因と結果(因果)を意味するわけではない。この区別を間違えると、「アイスを規制すれば溺水事故は減る」といった明らかに誤った結論にたどり着いてしまう。

交絡という魔物

 アイスを食べることと溺水事故は、一見、因果関係があるように見える。だが実際は、「暑い夏」という共通の要因が背後に潜んでいるだけだ。

 この「第三の要因」によって、あたかも直接影響があるかのように見えてしまうのが「交絡」という現象である。この交絡によって因果関係の推定がゆがむことを、「交絡バイアス」と呼ぶ。

 肺がんの本当の原因はタバコであり、飲酒と肺がんの間に見えた関係は「喫煙」という第三の要因による交絡にすぎない可能性もある。

 このように交絡が生じるのは、ある出来事Aと結果Bが、実際には共通の第三の要因Cから影響を受けている場合だ。AとBを眺めると「AがBの原因だ」と思えてしまうが、実はCが両方を動かしているだけ。このCを交絡因子と呼ぶ。

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