2026年8月号掲載

外国人患者 医療ツーリズムと日本の現実

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著者紹介

概要

今、日本の医療は危機に瀕している。患者数の減少、医療製品の価格高騰、急増する病院の倒産…。なぜ、こうした事態に陥ったのか。その理由と現状を、国際診療の専門家が解説。また、苦境を脱するカギとなる「医療ツーリズム」の可能性や、外国人による健康保険のタダ乗りなど、医療制度が抱える課題についても掘り下げる。

要約

なぜ今、医療機関が倒産するのか?

 現在、日本の医療制度は危機に瀕している。少子高齢化で医療費は増大し、国民の負担は増える一方なのに、病院の倒産が相次いでいるのだ。

医療崩壊の一因 ―― 患者数減

 なぜ今、多くの医療経営は苦しい状況に置かれているのか。要因の1つが患者数の減少だ。

 医療の世界では、以前から「2025年問題」が危惧されてきた。2025年に団塊の世代(1947~49年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となり、そのニーズは医療から介護に移る。つまりこの年以降、患者数は年々減少していくと予想されたのだ。

 患者数が減ると何が問題なのか?

 現在の医療機関(病院、診療所、歯科医院)は薄利多売の収益構造といってよく、「安い医療費×多くの患者数」で成り立ってきた。その前提が崩れれば、経営は厳しくならざるを得ない。

 そして、実際には「2025年問題」は前倒しされた。2020年に始まった新型コロナの流行が原因だ。これにより、感染を恐れた高齢者たちの医療機関離れが一挙に進み、患者数が激減した。

 実は、いまだに患者数はコロナ禍前の状況には戻っていない。厚生労働省の「病院報告」によると、コロナ禍前の2019年6月末と2025年6月末の患者数を比較して、入院患者が12.2%減、外来患者が14.7%減になっている。

 この患者数の減少は、少子化に伴い今後も続く。医療機関の経営を悪化させていくのは間違いない。

病院を襲うコスト増

 まず挙げられるのは、医療製品全般の価格上昇だ。コロナ禍で中国など各国の製造業は停滞し、安価な製品が不足、おかげでこれらの値段が一挙に上がり、病院経営における物品費を高騰させた。

 エネルギー価格の上昇なども影響は大きい。2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻で、電気とガスの値段が世界中で高騰した。日本は同時期に進行した円安の影響もあり、価格が依然高止まりしている。規模の大きな病院では、光熱費だけで億レベルの支出となっている。