2026年7月号掲載

差別と格差の経済学

Original Title :DISCRIMINATION AND DISPARITIES (2019年刊)

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著者紹介

概要

個人や組織、国の間で生まれる“格差”。それをもたらすものとは? 「わずかな差が、結果の大きな差に結びつく」という著者が、国家や民族、企業など様々な事例を挙げ、格差の原因についてわかりやすく解説。従来の格差=差別という社会観を一蹴し、不平等な成果分布は、自然界でも人間社会でも一般的に見られると述べる。

要約

格差と前提条件

 個人、集団、組織、国家の間で、経済をはじめとする様々な面で大きな格差が見られる。

 格差の原因については、様々な説明が試みられている。だが、どのような説明がつけられようと、現実の世界に見られる格差は偶然によるものとは考えられない、という点では意見が一致している。

 ある分野で成功するためには、その分野に固有の前提条件を満たさなければならない。よって成否はそうした前提条件を満たせるかどうかに左右される。そして、そのわずかな差が結果の大きな差に結びつくことがある。

スコットランド

 個人や集団、国家が、ある目的に関して多くの前提条件を満たしていても、たった1つが欠けていたためその目的が失敗に終わることがある。逆に、欠けていた前提条件をすべて満たす個人、集団、国家が突如として登場し、華々しい成功を収めることもある。

 世界から取り残されていた国が突如、表舞台に登場した例としてはスコットランドが挙げられる。

 スコットランドは何世紀にもわたって経済も学問も遅れたヨーロッパ文明の辺境だった。ところが18~19世紀に、イギリスの学問分野で傑出する業績を上げた人物にはスコットランド出身者が目立って多かった。哲学のデービッド・ヒューム、文学のサー・ウォルター・スコッ卜、経済学と哲学のジョン・スチュアート・ミル…。

 この頃、この国でどんな変化が起きたのか。1つは、教会が宗教的な啓蒙活動を推進したことだ。牧師に聖書を読んでもらって意味を教えてもらうのではなく、誰もが自分で聖書を読めるようにならなければいけない、という趣旨だった。

 もう1つの変化は、英語学習が熱心に推進されたことだ。その結果、土着のゲール語を話していた人々も英語の読み書きができるようになる。

ユダヤ人

 国ではなく、民族が並外れた業績を上げる例もある。ユダヤ人がそうだ。今では科学から芸術にいたるまで大勢のユダヤ人が国際的に名を轟かせているが、この現象は19~20世紀になってからだ。なぜなら19世紀になるまで、ユダヤ人はほとんどの大学で門前払いを食わされていたからだ。

 18世紀末に、アメリカが世界に先駆けてユダヤ人に万人と同じ法的権利を認めた。他の国々も19世紀にユダヤ人に対する禁止条項を廃止する。

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