2026年5月号掲載

ホロコースト後の機能不全 ドイツ、イスラエル、犠牲と加害の関係

最新号掲載 ホロコースト後の機能不全 ドイツ、イスラエル、犠牲と加害の関係 ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

戦後、国際社会は平和な世界の構築を目指してきた。その歩みが今、行き詰まっている。ロシアのウクライナ侵攻、深刻化するパレスチナ問題…。なぜ、争いは防げなかったのか。本書は、大戦後のドイツとイスラエルに着目し考察する。ホロコーストの「加害者」と「犠牲者」、その特殊な関係性が今日の機能不全を生み出した?!

要約

世界の機能不全

 現在、世界は機能不全に陥っている。ウクライナでもパレスチナでも、戦後に国際社会がつくりあげたルールが破られ、違反者は「それがどうした」といわんばかりで、意にも介さない。

 国際刑事裁判所(ICC)はプーチン大統領もネタニヤフ首相も裁判にかけることができない。その一方で、ガザでは食糧配給所に殺到する飢えた人々に銃口が向けられ、死者が増えている。

 第二次世界大戦後、より良き世界の構築を目指してきたはずの国際社会が、なぜこのような機能不全に陥っているのか。

イスラエルの建国とパレスチナ難民問題

 戦後80年以上が経過しても、いまだに世界のあり方に様々な影響を及ぼしているホロコースト。この出来事が主たる原因で、国連はパレスチナの分割を決議し、イスラエルが生まれた。

 そしてイスラエルの建国と共に、パレスチナ難民問題が発生した。それから約80年が経とうというのに、難民らの状況はさらに悪化している。そこから生まれる怒りや憎しみが新たなテロを生み続け、イランやアメリカの介入を招いている。

ドイツにとっての「国是」

 戦後、ホロコーストの惨状を突きつけられた国際社会は、このようなことを二度と繰り返してはならないと決意した。人種や民族、宗教などに関係なく基本的人権が守られねばならないという想いは、国連憲章に謳われた。国際法廷で戦争犯罪人らを処罰し、人権を保障するために、国連を中心に新たな基準が確立されていった。

 これら戦後の世界の道徳的・倫理的要請を、最も真剣に実践してきたのがドイツだった。600万人のユダヤ人の死に責任のある国として、これに取り組まないわけにはいかなかった。

 しかし、イスラエルへのドイツの関わり方は公平無私なものではあり得なかった。ホロコーストが一因でイスラエルが生まれたように、イスラエルの建国によりパレスチナ難民が発生したという因果関係は自明である。アラブ諸国との戦争でイスラエルが壊滅するようなことがあれば、それこそ「第2のホロコースト」であり、ドイツは間接的な責任を負うことになる。

 つまり、イスラエルに対するドイツの姿勢は最初から条件付けられていた。犠牲者の側に立つという前提は、過去を反省し償うという、良き意図から発していた。しかしパレスチナ問題に全く解決の糸口が見えず、イスラエルの強硬姿勢が顕著になる中で、ドイツの立場は苦しくなってきた。

 ホロコーストへの罪悪感から、ドイツはイスラエルに忖度しているとの声が上がり始めた。「反ユダヤ主義」という万能の言葉であらゆる批判を封じ込めようとするイスラエルの肩を持っていると、後ろ指を指されるようになったのだ。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

アメリカの新右翼 トランプを生み出した思想家たち

井上弘貴 新潮社(新潮選書)

西洋近代の罪 自由・平等・民主主義はこのまま敗北するのか

大澤真幸 朝日新聞出版(朝日新書)

危機と人類 〔上〕〔下〕

ジャレド・ダイアモンド 日本経済新聞出版社

アメリカ現代思想の教室 リベラリズムからポスト資本主義まで

岡本裕一朗 PHP研究所(PHP新書)