2026年4月号掲載

ゼロから創らない戦略 イノベーションを駆動する「価値移転」の法則

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著者紹介

概要

躍進した企業を、“価値移転”という観点から分析した書。ベンチャーキャピタリストの著者は言う。イノベーション=ゼロからの創造ではない。既存リソースを高く評価されるところへ「移転」することでも生まれる、と。本書では、ヒトやモノなど多様な成功事例を紹介。新事業に悩むビジネスパーソンに、新たな着眼点を提供する。

要約

イノベーションの罠

 「イノベーション=ゼロからの創造」

 私たちは、無意識にそう思い込んでいる。

 しかし実は、巨大な富の源泉は価値の「創造」ではなく、価値の「移転」にこそ宿る ―― 。

「マーケット創造」の罠

 事業を構想する際、「新しいマーケットを生み出す」ことを目指すアプローチは多い。だが、これは大きな罠だ。「人間の欲求そのものをゼロから創り出そうとする」のに等しい取り組みであり、極めて困難だからである。

 象徴的な例が、3D対応テレビだ。「3D映画のような映像を家庭で楽しめる」と、家電メーカーがこぞって発売した。しかし、多くのユーザーは専用メガネをかけてまで観たいとは思わなかった。

 ここにあるのは、「新しい体験をつくろうとしたが、それが人間の根源的な欲求と接続されていなかった」という問題である。

人間の欲求は普遍的

 人間の欲求は驚くほど普遍的だ。その満たし方が、テクノロジーによって入れ替わってきたにすぎない。例えばコミュニケーションの領域では、自分の思いや考えを伝えたいという欲求は、かつては口伝えや手紙で満たされていた。それが、電話、ラジオ、インターネットと変化してきた。

 こうしてみると新産業の勃興も、普遍的な欲求の充足手段に対する大規模な「新陳代謝」だと捉えるべきだろう。企業や起業家が本当に取り組むべきは新しい欲求の創造ではなく、古くからある欲求の満たし方の「入れ替え」なのである。

欲求は「リソース」で満たす

 この「早い移動」という価値を、「顧客便益」と呼ぶ。顧客便益とは、人間がもつ根源的な欲求に対し、それを満たす手段を提供することで得られる価値や効用を意味する。

 そして、顧客便益の源になるのが「リソース」、つまり顧客便益を実現するための「原材料」だ。人材(ヒト)、資産(モノ)、資金(カネ)、情報(データ・知的財産・ブランド)などが代表的である。「早い移動」という顧客便益を実現するためのリソースは、自動車や運転手だ。

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