2024年11月号掲載

「ネット世論」の社会学 データ分析が解き明かす「偏り」の正体

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著者紹介

概要

ネットでは、多数派の意見に見える。しかし、実際はそうではない!? ネット上で、批判されることの多い政党が選挙で勝利したり、不支持派が多い人物が首長選挙で圧勝したり。なぜ、こうした乖離が起こるのか? メディア・コミュニケーションの研究者が、客観的なデータや学術的な理論をもとに「ネット世論」を徹底解剖する。

要約

「偏り」はなぜ生まれるのか

 この10年間で、随分と「ネット世論」の影響力は大きくなった。テレビなどで、「ネットではこう言われている」と紹介されることも増えた。

 では、ネット世論とは何なのか。

世論とは何か

 まず、そもそも「世論」とは何なのか。コミュニケーション分野における百科事典の「Public Opinion」の項目には、次のように書かれている。

 ―― 世論には、ある種の構文的な内部矛盾がある。「Public」が集団や普遍的なものを示すのに対し、「Opinion」は一般的に個人と結びつけられ、やや内面的で主観的な表現とみなされる。

 この指摘は、世論の難しさを端的に表している。すなわち世論には、社会を代表する普遍的な民意という側面と、個人個人の勝手な心情表明という2つの側面があるのだ。

従来の世論とネット世論

 このように、「世論」とは曖昧な概念である。従って近年では、「世論調査により集計された回答の総和」などといった形で定義される。しかし、これが通用しないのが「ネット世論」だ。

 従来の世論とネット世論の違いとは何か。結論からいうと、従来の世論とネット世論はそもそも生成原理が異なる。

 従来の世論は、政府やマスメディア、研究者がアンケート調査等により国民に質問し、国民が答えるという形式をとっている。つまり、国民は「聞かれたから答える」のである。

 一方で、ネット世論は全く異なる。

 第1に、誰も国民に質問をしていない。国民は自ら、ソーシャルメディアや動画のコメント欄に意見を記入する。これは「聞かれてもいないのに意見を発信する」という、極めて能動的な態度だ。

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