2022年3月号掲載

「経済学」にだまされるな! 人間らしい暮らしを取り戻す10の原則

Original Title :TRAITÉ D’ÉCONOMIE HÉRÉTIQUE

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著者紹介

概要

労働市場を柔軟にすれば失業が減る。公的債務を減らすため緊縮政策が必要 ―― 。こうした主張は今、主流の新自由主義の思想では“常識”とされる。だが、それらは、特定の時代の特定の層を利する「歪んだルール」に過ぎないと喝破。“異端”の立場から、主流派経済学を検証した。フランスの「怒れる経済学者」による警世の1冊。

要約

経済学は科学ではない

 「自由貿易はすべての人に利益をもたらす」「労働市場を柔軟にすれば失業を克服できる」「公的債務は将来世代を危機に陥れる」…。

 30年以上も前から、アメリカ、フランス、イタリアなど、あらゆる先進国でこのような主張が繰り返され、人々の心に深く浸透している。

 しかし、経済学的な常識として我々に押しつけられるこうした新自由主義的な「思想」に基づく意見は、本当に正しいのか?

ノーベル賞経済学者の意見が食い違う

 そもそも経済学は、客観的事実を実験と分析によって立証する“科学”と呼べる学問なのか?

 2014年度にノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロールは、著書『良き社会のための経済学』の中で、次のように述べている。

 「欧州統合が疑問視されている現状において、(中略)統一ヨーロッパの諸制度が全体として成長に寄与してきたことを思い出しておくのは有益である」

 一方、2001年度にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツは、著書『ユーロから始まる世界経済の大崩壊』の中でこう述べる。

 「ユーロは不平等の増大をもたらした。(中略)ユーロは格差を広げたのだ」

 おそらくスティグリッツも成長の全体的上昇に気づき、ティロールも格差の広がりに気づいていたが、それぞれ本質的とみなす側面が異なるのだ。

 この例のように、同じ状況を分析しても解釈の違いが生じる。彼らは本当のことを言っているのだが、それぞれの関心が、同じ問題の別の側面に向いているため、意見の相違が生じるのだ。

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