2018年1月号掲載

宗教国家アメリカのふしぎな論理 シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ

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著者紹介

概要

大方の予想を覆して誕生した、トランプ新政権。それを可能にしたものとは? 神学者の森本あんり氏が、トランプ現象の背景に迫った。アメリカのキリスト教は他の国とどう違うのか、それが社会にどのような影響を与えたのか。かの国に根づいた独自の宗教性を切り口に、ポピュリズムが蔓延するアメリカの現在を読み解く。

要約

アメリカを解くカギは宗教にあり

 トランプ新政権が誕生し、アメリカ政治の動向がきわめて予想しがたくなっている。

 外交面に限っても、アメリカは今後も世界を牽引するパワーを維持できるのか、それとも一国主義を選択するのか。東アジアとの関係はどうなるのか。そのゆくえは、まさに予断を許さない。

 本書では、かの国の現在を深層から把握するために宗教に注目する。というのも、アメリカ独特の思考や論理が形成される上で、「アメリカに土着化したキリスト教」という要素が決定的な役割を果たしているからだ。

キリスト教の「土着化」

 一般に宗教は、それぞれの土地に根づいて発展する際に「土着化」という変容のプロセスを経る。

 このプロセスは、生体がインフルエンザなどのウィルスに感染した時のことを考えるとわかりやすい。ウィルスは宿主に受け入れられ、そこで繁殖してゆく過程で、宿主に大きな影響を及ぼすと同時に、自分自身をも変化させ、亜種を生む。

 そのように自分を変化させることによって、ウィルスはいっそうよく宿主の生態環境に適応できるようになり、ますます自己繁殖してゆく。

 宗教も同様だ。伝播の過程で、その土地の文化に大きな影響をもたらしつつ、同時に自らを変化させてゆく。これが「土着化」である。

 キリスト教もアメリカという土壌に根づくうちに、強調点や視座を変えながら適応を繰り返してきた。その結果、ヨーロッパとおおもとの精神は同じでも、土地や文化に即して独自の現象形態が生み出されるようになったのである。

片務契約から双務契約へ

 この要素を特に強調したのはカルヴィニズム神学だが、その中心的なモチーフは「片務契約」、すなわち神は人間の不服従にもかかわらず一方的に恵みを与えてくれる存在である、という点だ。

 ところが、キリスト教がアメリカで土着化するにつれ、次第にその強調点が転移して「双務契約」化する。双務とは、神と人間がお互いに契約履行の義務を負う、ということだ。すなわち、人間の義務は神に従うことであり、神の義務は人間に恵みを与えること、となるのだ。

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