2015年6月号掲載

「衝動」に支配される世界 我慢しない消費者が社会を食いつくす

Original Title :THE IMPULSE SOCIETY

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著者紹介

概要

副題「我慢しない消費者が社会を食いつくす」。かつては慎ましかった社会が、今や自己の欲求を満たすことを最優先する社会になった。必要かどうかよく考えず、欲しい!という思いだけで、ぱっと物を買う人は少なくない。人々の「底なしの欲望」を取り込み、繁栄してきた社会経済システム。その弊害を検証し、「豊かさ」の代償は社会の破滅、と警鐘を鳴らす。

要約

インパルス・ソサエティの誕生

 シアトルから車で東に30分。田舎道の先に、「リスタート」がある。ここはインターネット依存症リハビリ施設。患者はゲームにのめり込み、仕事も人間関係もめちゃくちゃになった人たちだ。

 例えば、4年間オンラインゲームに夢中になり、その結果、体力は衰え、金銭的にも困窮し、人と向かい合って話すことも困難になった患者がいる。

 ゲーム会社はプレーヤーに長くゲームをやらせたいと考える。そこで、プレーヤーがゲームに興じる間、プレーヤーが残していったデータを集め、そのデータを使ってゲームをより「没頭できる」ものにする。その結果、人々はゲームの世界の不思議な魔力にさらにはまり込んでいく。

 それを動かしているのは、売上拡大を狙うゲーム会社と、プレーヤーの飽くなき自己表現欲だ。

 こんな話は、一般の人には無関係に思えるかもしれない。しかし実は、彼らの根幹にある問題は誰もが直面するものだ。つまり、消費者が欲しがるものを与えることに長けた社会経済システムとどのように付き合っていくかという問題だ。

 これは、検索エンジンやアマゾンが私たちの好みを予想するという程度の話ではない。消費経済のシステム全体が、個々人の願望や自己イメージなどを真ん中に据えるようになったということだ。

 音楽で自分がなりたい気分になる。体も手術で自分流にカスタマイズする。SNSで「いいね!」と言ってもらえるような友達をつくる…。

 今日、あらゆる分野において、大小様々な規模で、私たちの社会は、たとえ、結果がどうなろうとも「今すぐに欲しい」社会になりつつある。すなわち、「インパルス・ソサエティ(衝動に支配される社会)」となりつつあるのだ。

 

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