2004年3月号掲載
イノベーションへの解 利益ある成長に向けて
Original Title :The Innovator's Solution
著者紹介
概要
株式市場で“ソニー・ショック”という言葉が踊り、「ソニーよ、どうしたのだ?」と市場関係者は戸惑った。だが、本書の答えは明確である。1981年以降、破壊的イノベーションを全く生み出していないからだ。本書の内容を端的に紹介するのは難しいが、敢えて言えば、「新規事業を絶対に成功させる方法、教えます」「ライバル企業の潰し方、教えます」―― だ。
要約
なぜ破壊的イノベーションか?
自社の中核事業が成熟した後に、新たな成長基盤を築くことは非常に難しい。
だが、新規事業を発展させ、ライバル企業を破滅に追い込む方法はある。それが「破壊的イノベーション」である。
2つのイノベーション
イノベーションには、「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2つがある。
持続的イノベーションとは、従来製品よりも優れた性能で、要求の厳しいハイエンドの顧客の獲得を狙うものだ。この中には、多くの企業が行っている「漸進的改良」がある。
持続的イノベーションの戦いで勝つのは、既存企業と決まっている。その戦いは、より良い製品を作る競争であり、既存企業は勝てるだけの資源を持っているからだ。
それに引き換え、破壊的イノベーションは、現在の製品ほどには優れていない製品を売り出すことで、その市場を破壊し、定義し直す。
この破壊的イノベーションはシンプルで使い勝手が良く、安い製品を提供するため、新しい顧客やそれほど要求が厳しくない顧客にもアピールする。こうした破壊的な製品が、いったん新しい市場やローエンドの市場で受け入れられると、改良のサイクルが始まる。
やがて技術は向上し、より要求が厳しい顧客のニーズを満たすようになる。こうなると、破壊者は既存企業を滅ぼす軌道に乗ったことになる。
破壊的イノベーションには、業界リーダーを無力にする効果がある。大手企業には、持続的イノベーションを支えるために設計された資源配分プロセスがあるため、構造上、破壊的イノベーションに対応できないのだ。また、破壊者にとって魅力的なローエンド市場を防御する意欲もない。
一方、競合企業の優良顧客の獲得を狙い、より良い製品を開発して既存の市場で販売しようとすれば、競合企業は必ず戦おうとする。
これは、新規参入企業が大規模で既存企業よりも大きな資力を持っている場合にも当てはまる。